宮崎牛のリブロース3kgを手に入れました。ふるさと納税で牛肉部門ナンバーワンの都城市に納税した結果です。
こういう塊肉は自分で買うとエライ金額になりますので、ふるさと納税で手に入れましょう。
以下はふるさと納税のサイトです
ふるさと納税なら罪悪感なくこの塊肉で遊ぶことができます。
折角なんで「はい。はい。」言いながらパル的な料理を作り、バズらせてPVうはうは計画を立てていたんですが、結局すき焼きとステーキになりました。
想像力がないときは王道でカバーするスタイル。ただ折角なんでステーキはいつもより労力をかけて焼いていきたいと思います。
前座:宮崎牛のすき焼き
準備
リブロースなのですき焼きを作っていきます。まずブロックから掃除。薄切りの邪魔に成ると予想されたのでリブキャップの部分を外します。
途中の光景。
ある程度掃除をしていった後にスライスしていきます。
えーと・・・糞難しいです。ブロックの牛肉の薄切りがこんなにも難しいとは想像以上でした。もちろん冷やして切りやすくしているはずなのですが、宮崎牛は脂肪の融点が低いのでどんどんだれてきます。
「もうだめだ。いっそのこと3kg丸ごとローストビーフにして『はい』とか言ってればいいんじゃねーの?」
やましい気持ちがムクムクと湧き上がってきます。
そうこうしているうちに「倒して削ぐようにきればいい」という事に気づきます。途端に楽になる。コペルニクス的転回ですね。倒したので90°しか回転していませんが。
できました。
調理
野菜とかも切ってこんな感じです。
割り下は「今半の極上 すき焼割下」になります。
色んな所の割下を試しましたが、結局今半の割り下が一番美味しい。異論ある人はおすすめの割下教えてください。
ただし今半の割り下は3種類あるので気を付けてください。「極上(といっても1080円)」以外は微妙です。
焼いていきます。関西人なので関西風で失礼します。失礼するどすぇ~。
牛脂もブロックから切り出したもの。
1個100円の卵につけて食べるとたいそう美味しい。口の中に入れるだけでサラサラとした和牛の脂が広がっていったと思えば、もう消失しています。
松茸をたくさん買って大松茸すき焼き展の亜種みたいな事をすればバズるチャンスはあったと思うのですが時期が違いますね残念。今半の極上割下が美味しいってことぐらい。
まあすき焼きはこんなものです。すき焼としゃぶしゃぶはいい肉さえあれば、いつでも日本トップレベルの味を叩き出せるのでワイワイやりたい時はおすすめです。
余った肉
左が切れ端、これは極上のガーリックライスやガーリック炒飯になります。
上がリブキャップ、カルビの部分ですね。下が整形後のリブロース。これをステーキにしていきます。
宮崎牛のステーキ
理想の焼き方とは
タイトルは大げさにつけましたが、ステーキの焼き方に正解はないということを以前記事にしました。しかし、好みの焼き加減と家庭でもできる調理法の限界点を考えた時に、自分なりの1つの到達点は持っています。
自分が均一なものが好きなだけですが、完全な均一レア+表面の十分な乾燥(メイラードゾーン含む)です。
ウルフギャングのような表面で中が完全なレア。これが目指す到達点。
完全な均一レアは家庭でも恒温調理器を使えるようになりましたので、お猿さんでもできます。何℃で肉にどういう反応がおきるかとかは適当にググってください。
問題は表面の十分な加熱です。乾燥やメイラード反応を表面に作るには熱量×時間を必要とします。しかし時間をかけるほど内部も伝導熱で温められてしまい、コラーゲンの収縮・ミオグロビンの変性・肉汁の沸騰が起こります。
つまり表面のメイラード反応はレアな部分の消失とトレードオフなわけです。恒温調理で誰でも均一な火入れができる現在では、いかに目標温度の部分を残したまま表面を加熱するかという事が家庭のステーキの課題となっています。
恒温調理をしたものの、フライパンで仕上げの加熱が甘くて何やら表面がしっとりしたステーキ、逆に加熱が長すぎて切ってみると茶色い部分が多いステーキ。日本の低温調理界ではよく見かけますよね。
日頃はガスバーナーで加熱時間を短縮することによって上記の問題をクリアしていますが、どうせならということで今回は別アプローチでいきます。おそらく日本のブログレベルでは言及しているサイトは無いと思うんだけどなあ
Cryosear
表面には十分な加熱を加えたい、だけど中には熱を伝えず低温調理でセットした温度をキープしたい。解決策として考えられたのが
「凍結してから加熱したら良いじゃん」
表面を凍結することによって内部に薄い凍結帯を作り出す。その後十分加熱しても凍結帯のおかげで内部までは火が通らず温度をキープできるという発想です。
これ誰が言い出したんでしょうかね?ただ分子料理学の教科書と言っても過言ではない「Modernist Cuisine」(値段6万4千円)の本ではよく使われています。パーフェクトハンバーガーを作るときであったり、鴨の胸肉をレアなまま表面をクリスピーに保つ時に使っています。
動画はこういうのね
具体的な方法としては低温調理後の牛肉を液体窒素に数十秒つけてから大量の油で揚げます。
似たような発想としては冷凍された肉を最初にフライパンで加熱して、中を低温オーブンで加熱する方法があります。(Modernist Cuisine at HOME p196)
GIGAZINEでも似たような記事がありますね。
材料
てなわけで材料です。
500g近いリブロースと2つの包み紙。さて開けていきましょう。
中身は無水エタノールとドライアイスでした。無水エタノールとか病院の中になんぼでもありそうだけど、こんなことで首になりたくないのでamazonで買いました。
ドライアイスは1kg320円で4kg。結果的に2kgもあれば十分。
無水エタノール+ドライアイス
なぜこれを用意したかというと液体窒素は一般ピーポーには手に入れにくいんですよ。家庭で液体窒素に準じる超低温液体を簡単に作り出す方法が無水エタノール(スピリタス)+ドライアイスです。
液体窒素が-196℃ですがこの組み合わせは理論上-79℃まで到達できます。
ほらyoutuberが物凍らせて遊んでるでしょ。今回はこの組み合わせを使います。
調理
パッキングする
まず表面をエタノールスプレーで殺菌してから、リブロースをパッキングします。
あんまり強く減圧すると細胞内の水分が蒸発して細胞が壊れ肉汁が流出してしまう(Modernist Cuisine vol2 p213)ので適度にしましょう。正直ジップロック(±少量の油)と水圧を使う方法でもなんでも良いです。
ANOVAの設定温度
誰でも扱えるANOVAで加熱していきます。
設定温度ですが、目指す火入れと部位別の温度は
になります。(同上 vol3 p96より一部改変して引用、赤はお勧め温度)
好みがレアなので53.5℃に設定。もしANOVAの設定温度で困っている人は表を参考にしてください。
どうせ最後には高温で表面を処理するので肉の内部は菌がいないユッケ理論で肉を熱していますが、手洗いアルコール消毒は必須です。もし不安があれば54.4℃に中心温度が到達してから112分以上熱してください。(Modernist Cuisine vol1 p184)。僕も人に出すときは56℃に設定します。てなわけで温度設定はくれぐれも自己責任で。
加熱中。長めに1時間45分加熱。
できあがりました。
肉の重量の8%の塩をかけます。
超低温で冷凍する
フライパンにエタノールを注ぎドライアイスを入れます。
ゴポゴポゴポと激しい泡がしばらく起きます。泡が少なくなったら準備OK
肉を入れます
動画では液体窒素に25秒つけていたので、ここでは40秒~50秒ほど放置。引き上げます。
表面は冷凍されてますが中はまだあったかい(はず)です。
揚げる
鍋に油にドボドボ入れてガンガンに温度を上げていきます。225℃以上あれば十分ですが高ければ高いほどよい。残念ながらフッ素コートなので260℃以上は熱せません。
投入
あとは十分な焼き色がつくまで熱するだけです。(動画では35秒)
できました。
リブ芯がやや外れてるのと、ポテトが落ちてるw見なかったことにしましょう。
ステーキを食べる
低温調理は肉を休ませる必要がありませんので、そのまま切ります。
うーん完璧。中は完全なレアを保ちつつ、表面はきれいな焼き色がついています。
人によっては生じゃね?って思われるかもしれませんが、設定温度の好みなので勘弁してください。脂の融点は十分に超えているので食べると鼻の中に色んな香気が抜けていきます。
奥はステーキと同じくらい時間かけたフライドポテトです。そのうち書きます。
みてください。
変色しているのは表面のわずか1mm未満です。
ってウルフギャングのテクスチャーまで加熱するの忘れてた!この後ガスバーナーで焼きましたw
総まとめ
宮崎牛のリブロースをすき焼きとステーキにして食べました。
フライドポテトの記事はまた後日